研究概要 |
本年度は,前年度調査したフラクソン(磁束量子)の量子力学的特性を基に量子情報科学への応用として内部自由度を有する新しいタイプの新規量子ビットを提案した. 1.半整数フラクソン量子ビットの提案 通常のジョセフソン伝送線路と異なり,強磁性絶縁層を有する伝送路においては,フラクソンは半整数に量子化され,二つの半整数フラクソンが結合した新しい状態(半整数束縛フラクソン状態)を形成することを明らかにした.この状態では,フラクソンの相対運動による内部振動が生じる.我々は,この新しい振動を量子化して出現する量子状態を用いることによって,移動可能な量子ビット(半整数フラクソン量子ビット)を提案した.この量子ビットは,先に我々が提案したブリーザー量子ビットと異なり,トポロジカルな安定性を有する. 2.フラクソンの相対論的量子論 フラクソン(反フラクソン)は,ローレンツ不変性を有するサイン・ゴルドン方程式に支配され,相対論的粒子として振舞う,そして,それらが結合したブリーザーもまた,内部振動しながら移動する安定な相対論的粒子と考えられる,しかし,電流バイアス下では,ブリーザーはフラクソンと反フラクソンへと崩壊する.我々は,この量子力学的崩壊を調査し,ちょうど,素粒子の一つであるミューオンが崩壊するのと同様,量子崩壊に相対論的時間遅れが生じることを明らかにした. 3.古典フラクソンによる量子操作 古典フラクソンが,量子コンピュータの基本構成要素である量子ビットへ与える影響を調べた.結果,古典フラクソンを用いて量子ビットの結合を制御できることがわかった.そして,これを利用して制御NOT量子論理ゲートが構築できることがわかった. 以上の結果を踏まえ最終年度となる来年度は,フラクソンの量子性を用いた量子論の根幹問題に挑戦するとともに,量子フラクソンならびに古典フラクソンを用いた量子情報科学についてさらに検討を進めたい.
|