研究概要 |
最終年度となる本年度は,フラクソンの量子性を用いた量子論の根幹問題に挑戦するとともに,量子フラクソンならびに古典フラクソンを用いた量子情報科学についてさらに検討を進めた. 1.時間GHZの提案 量子力学は,ミクロ世界を記述するのに成功し,我々に新しい世界観をもたらした.しかし,その量子力学をマクロ世界に外挿してよいかどうかは,必ずしも自明なことではない.シュレディンガーは猫を例えに,重ね合わせの原理の非日常性を浮き彫りにし,量子力学の更なる理解を求めた.最近,ハイテクを用いて作り出された猫は,量子力学に軍配をあげようとしているが,決定的な証拠を得るにいたっていない.これに決着をつけるためには,マクロ実在論を否定し,量子力学の予言が正しいことを示す必要がある.この判定を与えるのが,1985年に提出された,Leggett-Garg不等式である.しかし,これはベルの不等式を基盤に時間領域に拡張したものであることから,統計処理を必要とし,不等式の破れにどうしてもあいまいさが残る.そこで,今回,不等式を必要としないGreenberger-Horne-Zeilingerの方法を時間領域で展開し,たった一回の実験で,量子力学の是非を判定する方法,時間GHZ法を構築した. 2.量子編み機の提案 静電的に結合した位相量子ビット列は,それに並走するフラクソンによって制御することができ,NMR類似の個別制御と組み合わせることによって,あたかも編み機のように情報を編みこみ,任意の量子計算が可能でることを明らかにした,さらに,このシステムには,量子誤り訂正が自然に導入できこともわかった.したがって,量子誤り訂正付き量子計算機の構築が可能となることがわかった.
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