研究概要 |
本年度は重い電子系d波超伝導体としてCeCu_2Si_2、CeCoIn_5、並びにCeIrIn_5を用いて、ジョセフソン効果とトンネル分光の実験を行った。まず、ジョセフソン効果については、上記超伝導体上に常伝導金属、s波超伝導体を積層したジョセフソン素子を作成し、主にジョセフソン臨界電流の磁場依存性に現れた秩序変数の位相の情報を調べた。CeIrIn_5については、これまでの研究で[100],[110]両方向でフラウンフォーファー回折図形に近い磁場依存性が得られていたが、[001]方向でも同様の特性が観察され、見かけ上s波的超伝導体で期待されるような結果が得られた。一方、同じ結晶構造を持つCeCoIn_5は薄片状の小結晶であるため、[001]方向の結果しか得られていないが、これまでのところ干渉型の磁場特性しか得られておらず、d波超伝導性と矛盾しない.両者の違いは、最近の理論で両者の超伝導性が異なる可能性が示唆されていることから本質的なものである可能性があり、さらに再現性を調べる予定である。また、CeCu_2Si_2では多結晶体上に作成した素子であるにもかかわらず、フラウンフォーファー回折図形に近い磁場依存性が得られた。このことは、ジョセフソン効果を見る限りでは、CeCu_2Si_2は結晶の方向によらず位相が揃っているs波超伝導的であることを意味している。一方、トンネル分光については、本年度購入したピエゾ素子を用いてCeCoIn_5上にPtの針を押し当てて点接合を作成し、研究を行った。接合の状態で特性は変わるが、いくつかの接合で通常のトンネル効果で期待されるような零バイアス電圧での微分伝導度の極小が観察されており、得られたエネルギーギャップの大きさも文献にある値を再現している。今後は、この方法で他の重い電子系超伝導体の分光も行っていく予定である。
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