研究概要 |
本年度は,多結晶試料を用いた測定・解析と単結晶合成を行った。以下の6項目にまとめる。 (1)良質のFe_2BO_4多結晶試料の合成 石英封入法により良質の多結晶試料を合成した。粉末中性子回折用に^<11>Bを用いた試料も合成した。(中村) (2)多結晶Fe_2BO_4のメスバウアー分光測定 常磁性状態・反強磁性状態での四重極分裂等のパラメーターの大きさと温度変化を正確に求めた。(中村) (3)多結晶試料の回折実験 高分解能中性子回折(及川),放射光X線回折(池田,下村)により,超格子反射の有無,結晶の対称性,電荷秩序配列を検討した。超格子反射は見っかっていないが,転移点付近で,格子の温度変化に異常を見出した。 (4)核四重極分裂の計算 ペロブスカイト型Mn酸化物をモデル物質として,核四重極分裂が局所構造の検出に有効である事示した。この手法を本系にも適用し,既存の結晶構造・電荷配列秩序のモデルでは,核四重極分裂の実験値を説明出来ない事を示した。(中村) (5)磁気構造の検討 ネール点以下で,磁場下でのメスバウアー分光測定を行い,磁気モーメントの向きを調べた。キャント磁性,あるいはらせん磁性と考えられる。(中村) (6)単結晶試料の合成 卓上型単結晶育成装置の購入し,各種雰囲気制御下でのFZ法により,単結晶試料の合成を試みた。長さ数100μm程度の針状結晶が得られた。(中村) これらの成果の一部は,Intemational Conference on Magnetism 2006(Kyoto),日本物理学会において口頭発表を行い,英文論文3報として発表した。今後は,単結晶を用いて,超格子反射探し,電荷秩序配列の検討を中心に研究を進める。併せて,磁気構造の検討も行う予定である。
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