境界が自由に移動できるような境界条件の下で、大変形する流体の運動の例として、重力下で垂れる流体ロープが固定された「床」に衝突する際に発生するコイル化、および、-定速度で移動する「床」にロープが垂れる際に生じるジグザグ状の運動不安定(meandering)の数理モデル化とその解析を中心に今年度は取り組んだ。 流体ロープの径が径の特徴的なサイズに比べて十分小さい領域では、三次元的な流れの場を、それと等価的な一次元モデルでよく近似することができる。本研究では、縦方向にはオイラー的、横方向にはラグランジェ的な描像によって、流体ロープの過渡的な振る舞いまでを記述することのできる新しい数理モデル(bending filament model)を構成し、他の方法と比較して格段に小さな計算コストを利用した数値シミュレーションを行った。 その結果、ロープのコイル化の実験で知られている知見のうち、流体が振動を始める条件とその際の振動数を、一次元モデルで定量的によく再現することができた。また、スケーリングの議論から、コイル化には関与する特徴的な力に応じて、粘性領域、重力領域、慣性領域と呼ばれる、ことなる三つの様態が存在し得ると予想されているが、我々のモデリングの範囲では、慣性領域に相当するスケーリング関係、および、転移の際の不連続性などの再現には成功しておらず、適用限界をより仔細に検討すべきであることが判った。 これらの成果はすでに論文および学会で発表を行い、さらに、meanderingの問題への拡張を含む議論の一般化を試みた結果を、現在、論文投稿中である。
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