研究概要 |
1.超微細スピンF=1をもつ1次元ボース・アインシュタイン凝縮体に対するグロス・ピタエフスキー方程式のソリトン解を解析した。単一モード振幅を仮定する方法と広田の方法の拡張の2つの方法を用いた。ソリトンは、強磁性状態、分極状態、サイクリック状態、の3つの状態で存在することを示した。また、強磁性状態と分極状態では、2つのピークを持つソリトンが存在することを見出した。F=2の場合の研究は少なく、これらの結果は新しい。 2.スピン1/2をもち引力相互作用する1次元フェルミ気体の基底状態を、ゴーダン積分方程式を用いて求めた。スピン上向きとスピン下向きの粒子数が異なる場合の解析であり、多くの応用を持っている。解法は前年度までに発展させた独自の手法である。強い相互作用、弱い相互作用、のおのおのの場合に対し、摂動級数の2,3次まで解析的に求めた。物理諸量は、結合定数γと分極Pの関数として表される。スピンを持たない自由フェルミ粒子気体の場合P=1から、上向きスピンと下向きスピンの粒子数が同じ場合P=0へ、滑らかな転移があることが示された。これは、1次元系でのBCS-BECクロスオーバーとして解釈される。 3.F=1スピノール型ボース・アインシュタイン凝縮体において、明るいソリトンの動的振る舞いを調べた。局在するソリトンではなく、有限密度を背景とする設定が新しい。方法として、可積分条件を満たす引力的非線形シュレディンガー方程式に対する逆散乱法による成果を用いた。ソリトン解は、両端での境界条件により、ドメイン型と位相変位型に分類される。また、2ソリトン衝突を詳細に調べた。特に、ドメイン型のソリトンが関与する場合、スピン混合現象が起きることを示した。この現象は、我々が見出したものであり、境界条件によらずに多成分ソリトン系でおきる普遍的な現象であることが示された。 以上のように、古典論と量子論の両方において、研究は順調に進展している。
|