研究概要 |
1.非線形光学における自己透過(SIT)現象は1960年代に活発に研究され、ソリトン物理の確立に大きな役割を果たした。その拡張として、近年、電磁誘導透過(EIT)現象が多くの興味を集めている。2つのレーザー光とラムダ配置の3準位原子系の相互作用を調べ、可積分条件を見出すことに成功した。ソリトン解を構成し、伝播の性質を詳細に解析した。現在、多ソリトン解を求め、衝突の振る舞いを調べている。多成分ソリトン系として、高次スピンF=1, F=2を持つボース・アインシュタイン系と密接な関係があり、さらに多くの興味深い成果が期待できる。 2.デルタ関数相互作用を持つ1次元スピン1/2フェルミ粒子系の基底状態をYang-Yangの積分方程式を使って解析した。解法は、和達(2002年)が導入した方法を拡張した。引力相互作用系において外場磁場を含めた点は、特に野心的である。相互作用が強い場合と弱い場合をともに解くことができた。また、相互作用定数と磁場の関数として、磁化を求めた。完全に対形成した非分極相、対形成のない完全分極相、それらの共存相、の3つの相が存在し、それらの相間には量子転移があることを証明した。 3.量子力学系を研究する時、エネルギーが実数値であるためには、エネルギー演算子はエルミート(自己共役)でなければならないと思われている。論文M. Wadati: Construction of Parity-Time Symmetric Potential through the Soliton Theory, J. Phys. Soc. Jpn,77,074005-1〜4(2008)において、ソリトン理論を用いれば、その反例が統一的に導かれることを示した。この成果は、Editor' s Choiceとして表彰され、科学新聞や物理学会誌に紹介された。
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