研究概要 |
平成18年度は,1)ランダム量子格子模型のための新な量子モンテカルロシミュレーション手法の開発とその応用,2)ランダムネスをもつ量子格子模型を定義するためのXML言語,およびC++クラスライブラリの開発,3)ランダム系のシミュレーションから得られる膨大な量の出力データを保存・検索・解析するためのアーカイブシステムの構築,の3点を目標として研究を行なった.3)に関しては依然開発準備段階にあるが,1)については,空間非等方性の非常に強い量子スピン系に対するBethe型の鎖間平均場理論,磁気双極子相互作用やRKKY相互作用など一般の長距離相互作用を持つスピン系に対する0(N)モンテカルロ法などを新たに提唱した.特に前者は空間非等方性と強いランダムネスやフラストレーションなどの共存する系で特に有効であると期待される.我々は実際に擬一次元サイト希釈量子ハイゼンベルグ模型に対してこの方法を適用し,従来の理論に比べより定量的であるだけではなく定性的にも正しい結果を与えることを示した.後者の手法に関しては,現在性能測定,ランダムネスをもつ系への適用,量子系への応用を進めている.2)に関して,大規模並列モンテカルロシミュレーション用の新たなスケジューラの開発を行なった.現存のスケジューラでは,個々のシミュレータの実行がシングルプロセスに制限されている,数千から数万のサンプルに関するランダム平均を取らなければならないランダム系のシミュレーションのサポートが不十分,等の問題があった.我々はこれらの制限のない多重並列化スケジューラALPS/parapackを開発した.このスケジューラにより,ランダム平均操作の自動化,計算の途中経過を確認しながらのサンプル数の再調整等,ランダム系のシミュレーションを並列スーパーコンピュータ上で柔軟に実行することが可能となった.ALPS/parapackは現在公開準備中である.
|