異方的超伝導、量子力学的位相のもたらす偶奇性の効果などの観点から、近年関心を持たれてきた所謂「梯子模型」で実現するさまざまな新しいタイプの量子相を統一的観点から考察した。ある種のボーズ粒子模型では、超流動、電荷密度波、という全く異なる秩序の間に隠れた対称性(SU(2))があり、このため、異なる秩序相の競合を統一的に考察することができるが、これと似た発想の考察を2列の梯子模型に対しても行うことができる。2列の梯子模型の場合、隠れた対称性はボーズ模型の場合よりも大きいSU(4)であり、この対称性の下に反強磁性、ネマティックなどのさまざまな量子相が統一される。低次元系特有の強い量子ゆらぎのため、この問題を正確に扱うには注意が必要であるが、場の理論などを用いた解析により、SU(4)対称性を持つ点の近傍には4つの新しいタイプの量子相が競合して存在することを示し、その間の量子相転移などの性質も決定した。他の従来から知られてきた相もそこにさまざまな摂動を加えることで理解される。また、この問題は「スピン1を持つボーズ粒子系」の問題に厳密に変換できるが、これにより、従来知られてきたものも含めたさまざまな相は、ボーズ粒子のさまざまな秩序状態として理解できることがわかった。さらに、この問題から派生して現れる「自己双対なsine-Gordon模型」の問題を考察し、その模型が一般的に一次相転移を記述することを示した。梯子の問題で得られた知見を2次元に拡張することは従来困難であると考えられてきたが、高エネルギー物理の分野で開発された「Contractor Renormalization」と呼ばれる手法を応用して、ある種の低エネルギー有効ハミルトニアンに写像することでこの困難を回避し、同様の描像が成立することを示した。
|