研究概要 |
液晶光バルブ(LCLV)を光フィードバック下で動作させると,多彩な非線形パターンを観測することができるため,非線形動力学の優れた実験系として興味が持たれている。回転光フィードバック下でLCLVに電圧を印加すると,ある電圧領域で花弁状パターンが出現する。電圧を増加させていくと,ある電圧で花弁が揺らぎ始め,時空カオス状態になる。さらに電圧を増加させると完全な乱流状態になり,その後再び均一な配向状態に戻る。電圧の増加に伴う静的な花弁状パターンの不安定化の過程を,実験および計算機シミュレーションによって調べた。 30°回転の場合,6枚の花弁が形成された後,電圧の増加に従って基本構造が明瞭になり,ある閾値電圧で方位角方向の波数3の揺らぎが成長し,花弁の濃淡が一枚ごとに入れ替わる2色性花弁パターンへと変化した。その後,一つの花弁の中に配向の異なる斑状ドメインが現れ,それが方位角方向に伝播するようになった。一方,花弁数が奇数の場合は,静的な2色性花弁パターンは現れず,基本構造から直接伝播パターンへと変化した。この定常状態から時空カオス状態への遷移過程において,時空間パターンのパワースペクトル,時間相関関数,波数分解時間相関関数を測定した。パターンが放射状であることから,画像を極座標に変換して解析を行った。花弁の形成過程においては,基本波数が指数関数的に成長し,伝搬パターンが生じると基本波数は減衰し始めた。この分岐の前に,基本波数の半分のモードが一時的に成長し,2色性の静的花弁パターンが出現することがシミュレーションからわかり,これを実験で確認した。波数分解相関関数の解析から,基本波数が偶数の場合,半分のモードが基本波数のモードよりも低い電圧で不安定化することがわかった。 パターンの時空揺らぎの特徴は,Karhunen-Loeve(KL)展開よって解析する計画であったが,現時点では解析ソフトが完成した段階であり,本格的な解析は次年度に行う。
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