研究概要 |
本年度はChalker-Coddington模型に変形を加え,右向きのチャンネルと左向きのチャンネルの数が異なる場合にどのような2端子輸送現象が起こるかを研究した。通常,これらのチャンネルは同数であると思われており,実際,ほとんどすべてのモデルは右向きと左向きのチャンネルが同数だと仮定している。しかしながら,右向きのチャンネルと左向きのチャンネルの数が異なる状況は,物理の基本原理と矛盾するわけではない。この状況は,最近の炭素のシート(graphene)の研究から注目を集めている。 本年度はこうした新規な状況をChalker-Coddington模型で実現することに成功した。grapheneではポテンシャルが長距離的であるとき,近似的にこの状況が成立していた。一方,我々は本模型を改良することで厳密にこの状況を実現出来た。このモデルでは,完全透過チャンネルが必ず1つ実現することを特異値分解により解析的に示した。また転送行列法による数値計算をおこない,コンダクタンスの分布や,透過固有値の解析を行った。これにより,完全透過チャンネルからの反発により,1以外の透過固有値が値が1の透過固有値に反発され,コンダクタンスの値や揺らぎが大きく変更を受けることを示した。(2006年9月,日本物理学会秋の分科会,千葉大学で発表。) さらに本研究を拡張し,完全透過チャンネルが複数あるような状況を調べた。これによる,完全透過チャンネルによる他の透過固有値の反発がどのように変更されるかを議論した。
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