研究概要 |
昨年度からChalker-Coddington模型に変形を加え,右向きのチャンネルと左向きのチャンネルの数が異なる場合にどのような2端子輸送現象が起こるかを研究している。この状況は,最近の炭素のシート(graphene)の研究から注目を集めている。 こうした新規な状況をChalker-Coddington模型で実現することに成功した。grapheneではポテンシャルが長距離的であるとき,近似的にこの状況が成立していた。一方,我々は本模型を改良することで厳密にこの状況を実現出来た。このモデルでは,完全透過チャンネルが必ず1つ実現することを特異値分解により解析的に示した。また転送行列法による数値計算をおこない,コンダクタンスの分布や,透過固有値の解析を行った。これにより,完全透過チャンネルからの反発により,1以外の透過固有値が値が1の透過固有値に反発され,コンダクタンスの値や揺らぎが大きく変更を受けることを示した。(2007年7月,EP2DS,Italyで発表。) さらに本研究を拡張し,完全透過チャンネルが複数あるような状況を調べた。これによる,完全透過チャンネルによる他の透過固有値の反発がどのように変更されるかを議論した。2端子コンダクタンスだけでなく,ポイントコンタクトコンダクタンスも詳細に調べた。 こうした研究と平行して,量子ホール効果におけるアンダーソン転移のスケーリング補圧を詳細に調べている。この補正が対数的かどうかを現在,検証中である。
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