研究概要 |
19年度からChalker-Coddington模型に変形を加え,右向きのチャンネルと左向きのチャンネルの数が異なる場合にどのような2端子輸送現象が起こるかを研究している。この状況は,最近の炭素のシート(graphene)の研究から注目を集めている。昨年度までの研究において、こうした新規な状況をChalker-Coddington模型で実現することに成功した。本年度はさらに本研究を拡張し,2端子コンダクタンスだけでなく,ポイントコンタクトコンダクタンスも詳細に調べた。これによりポイントコンダクタンスが広く分布する,すなわち自己平均性がないことを示した。 本モデルは時間反転対称性が破れた系を記述するために提案された。最近、理研のグループにより時間反転対称性があるモデルが提案され注目を集めている。我々もこうした系におけるコンダクタンス、スピンホールコンダクタンスを詳細に調べた。特に分布関数を調べ、このモデルが通常のシンプレクティッククラスとおなじ振る舞いを示す場合と、異なるふるまいを示す場合を明らかにした。 こうした研究と平行して,量子ホール効果におけるアンダーソン転移のスケーリング補正を詳細に調べている。転送行列法による準一次元的局在長を大規模数値計算で求め、詳細な統計処理を行い、臨界指数が20年以上信じられていた値よりもかなり大きいことを示した。こうした食い違いの原因は、従来の研究がスケーリングの補正を正しく扱わなかったことに起因していることを示した。
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