マイクロゲルにベルーゾフ・ジャボチンスキー(BZ)反応の光感受性の触媒であるルテニウム錯体を組み込み、BZ溶液中で酸化・還元反応に応じて自励的な振動する能動機能要素を得た。この要素を基本にして、要素数10×10のマクロゲルの格子状アレイを構築した。熱揺らぎに晒されている生体分子システムの情報処理には、揺らぎはむしろ積極的に利用されているだろうという作業仮説のもと、本研究では、外部からの時間的な揺らぎの導入による新奇な自己組織化現象の誘起に焦点を当てた。要素数の増加につれて、振動のコヒーレンス度Rは大きくなり、Rを最大にするノイズ強度は小さくなることを見出した。これは集団化によって促進されるコヒーレンス共鳴array-enhanced coherence resonance(AECR)を示している。更にノイズによって誘起された発火スパイクの要素間位相差を調べ、強結合領域では、ノイズは要素間の相関を破壊するが、弱結合領域では、むしろ相関を強める働きをすることが明らかになった。 光による抑制因子の制御が可能な為、この利点を生かしてフィードバック光によるマクロゲルアレイの結合様式の多彩な制御を行い、新奇な自己組織化現象の誘起を図った。まず、自励振動状態にある要素集団に大域的な遅延フィードバックを導入し、振動のコヒーレンス制御を試みた。要素間結合定数kと時間遅れτをパラメータにして、振動周期の分散R、及び要素間位相差の分散σ^2の集団平均を調べた。R、σ^2の何れもτに対して周期的に変化し、その周期は自励振動の周期に一致することが分かった。更に、コヒーレンスは結合定数に強く依存し、或る範囲内のk-値で促進されることが明らかになった。
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