研究課題/領域番号 |
18540386
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
田中 秋広 独立行政法人物質・材料研究機構, 計算科学センター, 主任研究員 (10354143)
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研究分担者 |
河野 昌仙 独立行政法人物質・材料研究機構, 計算科学センター, 主任研究員 (40370308)
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キーワード | 量子スピン系 / ベリー位相項 / 有効理論 / 量子相転移 / 量子スピン液体 / 秩序間競合 / 量子干渉効果 |
研究概要 |
(1)四角格子上の二次元ハイゼンベルグスピン系に交換相互作用の空間的異方性を導入した場合についてベリー位相項の影響を調べた。その結果、反強磁性秩序とダイマー秩序の間の競合が強い場合、有効理論に新たなベリー位相項(2+1次元0(4)非線形σ模型のθ項)が出現すること、そのベリー位相項の係数θを変化させる(一つの空間方向にボンド交替を導入して、その強さを調整することで実現される)ことで量子相転移点が現れることが示唆された。有効理論の観点からは、これは一次元量子スピン系のボンド交替の強さの変化に伴う逐次量子相転移が1+1次元0(3)非線形σ模型のθ項を使ってプローブできるという、Affleck-Haldaneの理論を二次元系へ拡張したものと見ることができ、二次元スピン系の新しいクラスの量子相転移である可能性がある(Physical Review Bに発表)。 (2)最近グラフェンの整数量子ホール効果やトポロジカル量子計算などのコンテキストで注目されている蜂の巣格子上のスピン系についても、以前四角格子上のπフラックス模型に対して行ったものと同様の解析・有効理論の構築を行った。その結果、反強磁性とダイマー秩序(Valence Bond Solid (VBS)秩序)の競合がトポロジカル項を持つ2+1次元の0(5)非線形σ模型で記述されることを確認した。解析の出発点であるディラックフェルミオンは、四角格子の場合と異なり、仮想的なフラックスを導入することなく、タイトバインディング模型の分散関係に自然に出現するので、蜂の巣格子は新規なスピン液体を探索するのに有利であることが示唆される。その他、反強磁性体の磁化過程に現れる磁化プラトーの量子化則がベリー位相やベリー接続の概念を用いて幾何学的に捉え直せることを見出した。(日本物理学会にて口頭発表、論文は投稿準備中)。
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