研究概要 |
本研究の目的は,低温原子ガス・ボーズ-アインシュタイン凝縮体や超流動液体ヘリウムに現れる量子渦糸乱流状態に対し,詳細な数値シミュレーションを行ってその物性を明らかにすることである.特に今年度は,低温原子ガス・ボーズ-アインシュタイン凝縮体中の量子渦糸乱流状態を詳細に調べ,以下の結果を得た.(i)渦糸格子を作る代表的な実験状況を模した数値シミュレーションによって,最終状態に到達するまでに、量子乱流状態が現れることを初めて指摘した.(ii)この乱流状態は減衰乱流であるが,その統計則を調べた結果,最も乱流が発達した時点でコルモゴロフ則が成り立っていることを見出した.(iii)粒子数の増加によって慣性領域が増大することを確認した. 非線形シュレーディンガー方程式系での量子乱流状態でコルモゴロフ則が成り立つことは小林・坪田により指摘されているが,本研究はそれを現実的な状況で実現するための条件及び,結果の予測を示したものである.今後,本研究の結果が実験的に確認され,量子渦糸乱流状態に対する理解が深まると期待できる. また,上記渦糸ダイナミクスに関連し,低温原子ガスの基礎物性についての理論及び数値的研究も実施した結果,光学格子やトラップ中のフェルミオン原子の振る舞いについても知見を深めることに成功した(研究発表欄参照).
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