研究概要 |
本研究の主目的は,低温原子ガス・ボーズ-アインシュタイン凝縮体や超流動液体ヘリウムに現れる量子渦糸乱流状態に対し,詳細な数値シミュレーションを行ってその物性を明らかにすることである.特に今年度は,超流動液体ヘリウム中の量子渦糸乱流状態をグロス-ピタエフスキー方程式に対する大規模数値シミュレーションによって詳細に調べた。(i)減衰乱流に対応するシミュレーションにおいて、256^3メッシュから2048^3メッシュまでシステムサイズを変えた系統的数値実験を行い、乱流状態の統計的性質を明らかにした。特に、コルモゴロフ3/5乗則が成り立っていることと、慣性領域のシステムサイズ依存性を確認した。(ii)大規模数値計算により量子渦糸タングル状態が自己相似的構造を持つ事を明らかにした。これは、スケールが大きくなるにつれて量子乱流が古典乱流の性質に近づくことを意味する。(iii)充分に乱流が発達した状態において、量子渦糸によるボトルネック効果が現れ、エネルギースペクトルが大きく折れ曲がることを確認した。大スケールでは古典乱流に近づくが、単純に同じ振る舞いをするのではなく、観測可能で古典乱流とは異なる特徴があることを示唆している。本研究は量子乱流を現実的な状況で実現するための条件及び,結果の予測を示したものである.今後,本研究の結果が実験的に確認され,量子渦糸乱流状態に対する理解が深まることが十分に期待できる.
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