平成18年度は、光量子情報システムの解析と最適化を行ない、以下のような研究の進展があった。 1.北海道大学で実現された2光子量子制御NOTの詳しい解析を行なった。二つの基底を用いて測定したゲートの論理演算のデータを使って、実験的に観測されるエラーのタイプを分類するものであり、ゲートフィデリティやエンタングルメントの性能に関する予測の精度を向上させた。今後は、北海道大学との実験的な試みに関連した協力を行いながら、2光子エンタングルメントを通過できる量子フィルターの解析へと繋げる予定である。 2.ホモダイン測定とフィードバックを用いて、単一光子の偏光状態の最適な量子クローニング方法を開発した。この方法は、光子のクローニングと電場の量子揺らぎとの間の本質的な関係に基づいており、光子の連続変数テレポーテーションにおいても有効である。現在は、その他の可能な応用に繋げるために、電場の揺らぎと光子数分布の間の一般的な関係も調べている。 3.多光子状態の位相スクイージングを調べた。現在、パラメトリック下方変換によって発生された光子とレーザー光との干渉効果に基づいた、新しいアプローチを行なっている。これは、多光子を用いた量子光学や量子情報における非常に将来性のある新しいアプローチである。来年度は、この新しいアプローチの定式化を行なう予定である。 4.非線形効果の準古典的な理論と量子理論との間の関係を解析した。単一量子システムと光の相互作用を最適化するように、ナノ粒子の光学的な性質を調べて、金属ナノロッドのアンテナを提案した。広島大学の実験グループと協力して実証を進める。
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