ナトリウム原子蒸気を含むガラスセルに、対向する方向から強い共鳴励起レーザー光を入射した場合に生じるパラメトリック蛍光、及びパラメトリック発振に関して、理論的実験的に解析した。このような蛍光は、off-axis方向に出射され、Stokes-shiftあるいは、anti-Stokes-shiftしており、対角線方向に出る4つの出射光は、電磁誘導回折により、強く結合している。そのため、エネルギー保存則、運動量保存則を満たす。すなわち、4つの出射光は、従来のパラメトリック理論、実験における信号光とアイドラー光の役目を果たし、一つの自然放出光から、同時に立ち上がっていることが推定され、我々はこれを4光波パラメトリック増幅(発振)と名づけた。ただし、系の軸対称性のため、パラメトリックゲインは軸対称に分配されるため、このままでは、発振に至らない。発振のためには、外部からシード光を入れるか、あるいは、励起光のビームプロファイルを楕円形にして軸対称性を崩すか、であるが、いずれの場合も発振が観測され、4光波は同じ閾値を持ち、しかも30%程度の高い効率で励起光から信号光に変換される。また、パラメトリック蛍光の段階においても、4光波のカオティックな時間波形は、強い相関を持っており、相関関数は、幅0.8マイクロ秒程度の相関時間で鋭いピークを持つ。この4光波が果たして量子力学的な相関を持っているのか、あるいは、例えば「4つ子の光子対」とも呼ぶ、光子レベルでの相関があるのか、そして、それが実現できたとして、それを用いた4光子Bell状態の実現は可能であるのか、等が今後の課題である。
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