前年度に引き続き、ナトリウム原子蒸気を用いたパラメトリック発振と増幅の問題を解析した。前年度は対向ポンピングによる4光波のパラメトリック発振を、シード光を入れた場合と、楕円ビームを用いた場合の2種類の方法により実現させたが、今年度は、一方向入射によるパラメトリック増幅の問題を取り上げた。この配置は、従来の電磁誘導透過の系であり、プローブ光は透明化はするものの、増幅には至らないという結論になっていた。しかし我々は実験のパラメーターを操作することにより、特に、原子密度を高くし、高いカプリング光強度を用いることで、プローブ光は大きく増幅され、また、それにつれてストークス光も同様のパワーで発生することが確かめられた。最大で30倍近いゲインが得られ、しかも線形吸収の極めて大きい周波数領域でも大きなゲインは観測される。これらの結果は、従来の電磁誘導透過が2モードしか考えていなかったのに対し、ストークス光も含めた3モードのリウビル方程式を解き、カプリング光は十分強く、定数であると仮定して、プローブ光とストークス光による結合伝搬方程式を解析することで理解することができた。また、カプリング光の周波数に関しては、吸収曲線の中心では、2つの非線形素過程が干渉を起こし、ゼロになってしまうため、カプリング光は中心より、サブレベル周波数分だけブルーあるいはレッドシフトした場合にパラメトリック増幅率が最大になることが判明し、実験的にも確かめられた。これらの結果をまとめて、Phys.Rev.Aに投稿中である。今後は、ストークス光に外部共振器をつけることで、パラメトリック発振を実現させる予定である。
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