水溶液中の生きたままの細胞を高い空間分解能と時間分解能で観察するためには、従来に比べ高い輝度のX線源が必要とされる。具体的には、水溶液中のタンパク質を空間分解能50nmで観察するために必要なX線光量は、約1×10^<16>photons/srであると見積もられる。ところが、実際に得られているX線光量はこれまでのところ約1×10^<12>photons/srである。この4桁の違いを埋める可能性を探るために研究開発を実施した。 原子過程計算コードおよび1次元流体計算コードを用いて、理論的検討を行った。その結果、(1)レーザー波長の短波長化、(2)最適な電子温度を得るためのレーザー照射強度の最適化、(3)白金錯体による細胞標識を組み合わせることにより、X線の光量を16倍に向上するとともに、必要なX線光量を100分の1に出来ることを提案した。これに加え、本開発研究とは独立に行っているX線集光光学素子の開発によりX線の集光効率を従来に比べ約12倍向上できる。これらをすべて組み合わせることにより、水溶液中の生きたままの細胞を観察するために必要な条件を満たすことが可能であることがわかった。 理論的検討結果を検証するため、軟X線プラズマカメラを開発し、アルゴン、窒素、クリプトン、ヘリウム等のガスジェットプラズマの計測を行い、X線発光強度のガス圧、ターゲットの原子番号、レーザーのパルス幅のそれぞれに対する依存性を調べた。これらめ結果は、理論的検討結果と定性的にはよく一致することがわかった。
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