これまでに開発したR行列法を用いた計算を推し進めた。本年度はミュオンあるいは反陽子の原子・原子イオンによる捕獲反応課程で、生成物の状態を識別した断面積・反応速度を計算した。生成物の状態を識別した厳密計算に成功したのは、本研究が世界で初めてである。 1.ミュオンとヘリウムイオンの衝突によるミュオン捕獲反応。 リドベルグシリーズで共鳴が現れる。共鳴でない直接捕獲反応の確率が小さいため、共鳴が重要な役割を果たす。 2.ミュオンと水素原子の衝突によるミュオン捕獲反応。 共鳴の寄与は無いが、直接捕獲反応の確率が大きく、Langevinの値に近い断面積になる。 3.反陽子と水素原子による反陽子捕獲反応。 これの生成物状態を識別した量子論的厳密計算を行うには大きな問題がある。近似法を導入して計算を行ってみた。生成物である反陽子水素(プロトニウム)が対消滅することの捕獲反応への影響についても調べた。 4.反陽子とヘリウムイオンによる反陽子捕獲反応。 ミュオンの場合と同様、リドベルグシリーズの共鳴が重要となる。共鳴は量子欠損理論を用いて解析してみた。
|