研究概要 |
本研究の目的は,超音波による広帯域の光弾性スペクトルを得ることが最終目的である。 平成18年度は,手法の有用性の確認を行った。また,配向緩和周波数が超音波周波数より,十分大きい,トリフェニルフォスファイト(TPP)と配向緩和周波数が超音波周波数と同程度の液晶等方相のペンチルシアノビフェニル(5CB)において方位角変化や位相遅れの測定をおこなった。 TPPのような通常の液体では,複屈折はひずみ速度にのみ関係するため,1次回折光に対しては,方位角変化は観測されず,位相遅れのみが観測された。位相遅れの値を、流動複屈折の文献値を用いると、de Gennens理論を縦波超音波に拡張した理論で説明できることが示された。また,5CBでは,配向緩和の影響のために,複屈折はひずみ速度にのみ関係せず,ひずみそのものにも関係するため,1次回折光に対しては,位相遅れだけでなく方位角変化も観測された。超音波周波数を5,9,15,25MHzと変化させ,さまざまな温度で測定を行い,音響光学理論によって位相遅れだけでなく方位角変化の強度依存性を解析し,超音波による等方性屈折率の変化と複屈折の複素比を計算した。この複素比は,流動複屈折の値と配向緩和時間の文献値から計算した値と非常によい一致を示した。 超音波周波数が増大すると,超音波の発信効率が悪くなるため,印加できる超音波強度が小さくなり,超音波による回折光強度が低下する。そのため装置の高感度化が課題となる。平成19年度は,高周波化つなげる第一歩として,超音波強度の小さい極限での方位角変化や位相遅れの高精度測定を試みた。光検出器をこれまで用いてきたフォトダイオードからフォトマルチプライヤーに変更する改良を行い,ラマンナスパラメータが0.1でも十分な感度が得られ,測定結果は,フォトダイトードでの解析結果の外挿点上のることが分かった。これにより低強度超音波でも十分な精度が得られることが分かり,実際の高周波化へ取り組みを行っている。
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