研究概要 |
我々は,電気泳動など荷電コロイド分散系の電気流体力学現象を扱うことのできる新しいシミュレーション法を開発し,世界で初めて濃厚なコロイド分散系の電気泳動の直接シミュレーションを実現した.その結果,これまで信頼性の評価が困難であった近似理論ではコロイド粒子の密度が大きい領域でセルモデルの精度が著しく悪くなることを示した.H18年度はこのコロイド分散系のための新しいシミュレーション法を用いて,各種荷電コロイド分散系の直接数値計算を行なった.特に,電場の下での電気泳動における多体性や非線形性や,シア流動下での非ニュートン性について解析を行なった.さらに,メソシミュレータでコロイド粒子のブラウン運動を考慮するための拡張を行った.イオンのない微粒子と溶媒だけの単純な系で計算を行い,自己速度相関関数の計算を行なったところ,短時間領域では指数関数的減衰を示し,通常のランジュバン方程式から求まる解析的な相関関数の結果と一致した.長時間領域ではべき則で減衰する長時間テイルを示しており,これは流体を介した運動量輸送の効果に由来している〜t^(3/2)というべき則を示している.今回の拡張によってブラウン運動と流体力学相互作用を正確に考慮したシミュレーションを実現することができ,両者の競合が重要な役割を果たす微粒子分散系の幅広い問題への適用が可能になった.これまでに複数の国内学会にて発表しており,現在論文を投稿準備中である.
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