研究概要 |
マイクロビームを用いて、油滴一滴からの結晶化に伴う散乱(回折)X線を測定した。試料にはトリラウリンを用いた。O/Wエマルション中の油滴の粒径を、100nm,500nm,1μm,30μm,50μmと変化させた。超音波は、出力100W,20kHz,印加時間2秒の条件で印加した。 (i)超音波の印加効果:室温にて超音波を印加した試料の方が、印加しない場合に比べて、結晶化時間が短くなっていた。したがって超音波印加の効果はあると考えられる。 (ii)結晶化速度の粒径依存性:1μm,30μm,50μmの試料については、超音波印加した場合、結晶化が促進された。しかし、100nm,500nmの試料については顕著な効果は見られなかった。 (iii)超音波の印加による結晶多形への影響:超音波印加により促進された油滴結晶中の結晶多形は、全て安定多形であった。この結果は、バルク油脂に超音波を印加した際の結晶多形への影響と同じであると考えられる。(iv)油脂の結晶化メカニズム:油脂の結晶化メカニズムについて、球晶の場合、中心から周囲へと動径方向に結晶成長の様子が観察されるが、このメカニズムが明らかとなった。すなわち、中心では、さまざまな結晶配向をとった微細な単結晶が集まり、そこから周囲に油脂の分子軸を成長方向に垂直にとり成長する。このような成長様式は、パーム油やPOPの球晶など、油脂の分子種は異なっていても、同様な結晶形(モルフォロジー)をもつ油脂分子で見られるので、油脂分子の球晶には、一般的に成り立つと考えられる。(v)せん断応力効果:研究期間中には実施できなかった。当初、本研究課題にて購入予定であったが、交付金額が購入予定価格とつりあわず、購入できなかった。現在、別予算にて装置の製作を行っており(今秋完成予定)、装置が入手でき次第、測定を行う予定である。
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