本年度行なった研究の第一は、生物集団の模型の原型と想定している2次元最適速度模型において、引力がある場合の安定性の線形解析である。現在の2次元最適速度模型では「特定の方向に向かって進む」という性質が取り入れられているため、空間軸の一つが特別な役割を果たし、解析は簡単になる。その結果、引力が微小量でも存在すれば、低密度領域はすべての感応度に対して不安定となり、安定な領域は最適速度関数の勾配の大きい領域のみに限られることがわかった。この研究は論文1、2として発表した。 続いて、生物運動に適用できる方向性のない模型についても研究中であるが、今年度の研究では数値シミュレーションによる結果しか得られていない。現在は解析的な研究の他、結果と対照できる実験的事実についても調査している。シミュレーションでは低密度で粒子(人、生物など)がいくつかのグループを形成することはわかっている。今年度では逆に高密度にした時に何が起こるかについても調べてみた。その結果、結晶に似た構造も現われ、物性系との関連の存在が期待できることがわかった。この成果は国際会議で発表を行なった(学会発表2)。 本研究の目的は1次元交通流の模型である最適速度模型をべースに1次元から3次元までを統一的に扱う模型の構築である。そのため、模型の基礎になる交通流についても国内の研究者と共同で研究を行なっている。論文3はその実験的な研究の論文であり、国際的に高い評価を得た。学会発表1はその詳細を国際会議で行なったものである。この発表については現在論文を執筆中である。
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