研究概要 |
ヘアレスマウス,ヘアレスラットから切り出した上皮から角層試料を作成し.角層試料中の水分量を調整して,ヘアレスマウス角層およびヘアレスラット角層についてX線回折実験を行った.さらに,ヒト角層についても予備的な検討を行った.これらの実験に加えて化学物質を角層に作用したときの,細胞間脂質のX線構造解析を行った. われわれのこれまでのヘアレスマウスの小角X線回折実験では角層中の水分量を20〜30wt%にすると長周期ラメラ構造と短周期ラメラ構造の反射がともに鋭くなることが分かっているが,この現象がヒトでも同様であるか検討した結果,多少の振舞の違いはあるがほぼ同様な振舞をすることが分かった. 水分量を20〜30wt%に調整した角層試料の小角X線回折実験を,われわれが発明した溶液セルを使って,(財)高輝度光科学研究センター(SPring-8)で行った.実験結果を検討し,溶液セルを改良した.とくに,試料セルに溶液を流し込んだときX線が当たっている角層試料部分が動かないように工夫し.試料セル中の試料部の大きさは直径が1mm,厚さが1mm程度に収まるように改良した,さらに少量の試料(試料部の大きさは直径が0.6mm,厚さが0.6mm程度)での測定を試みた. 改良した室温測定用試料セルを用いて,エタノールおよびリモネンを角層試料に作用させ,長周期ラメラ構造の反射と短周期ラメラ構造および炭化水素鎖の充填構造である六方晶と斜方晶の反射の時間変化を測定した.親水性のエタノールと疎水性のリモネンの細胞間脂質の構造への寄与は明白に異なることを明らかにした.
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