研究概要 |
津波地震のすべりの広がり,発生場所の特性,発生メカニズムを明らかにするために,WWSSN(世界標準地震計観測網)が整備された1962年以降に起きた津波地震について震源過程を詳細に調べた.これまで世界で起こった巨大地震の震源過程を遠地実体波解析で求めてきたが,同じ手法で数多くの解析を行っていると津波地震のすべりに特徴のあることがわかった.その一つが一般の地震に比べ『断層面積は大きいがすべり量は小さい』ということである。津波データから解析すると変異量が大きいことから,断層面積当たりのエネルギー解放量は小さいが,浅部での剛性率が小さく変形が大きいと推定される.また破壊伝播速度はこれまで遅いと言われてきたが,伝播速度は決して遅くなく普通の地震並みであること,普通の地震と違って長い時間に渡ってエネルギーを放出している(各点での破壊継続時間が長い)という特徴が見られた.また,こういう特徴を示す地震がすべて津波地震というわけではなく,これらが浅いところで起きれば津波地震となるが,深いところで起きれば津波地震とは認識されていない。たとえば1960年,1968年,1981年,1989年の三陸沖地震や1982年茨城沖地震がそれである.特に1982年茨城沖地震は海山の沈み込みが関係していると考えられる。津波地震も含め,『断層面積は大きいがすべり量は小さい』特徴を持つ地震のすべりにはなんらか水が関与していると考えられる。
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