研究課題
本研究の目的は、噴火に伴い発生する地震波と空気振動(空振)を同時に解析する手法を開発し、噴火ダイナミックスの解明に資することである。地震波形は火道内部の力学的状態を反映し、空振波形は噴火に伴って大気に加わる圧力変動や大気中に注入される高温物質の流量・温度等に関する情報を反映する。この両者を個別に解析する試みはこれまでもあったが、同時に解析した例は無い。本研究では、以下の3点を順を追って進めた。1)圧縮製流体の支配方程式の数値解法に基づく空振波形解析手法を開発する。2)既存の地震波形解析手法とのカップリングによる地震・空振波形の同時解析手法を確立する。3)開発された上記の手法を、2004年浅間山噴火時に得られた地震・空振波形に適用し、噴火のダイナミクスを詳細に理解する。平成18年度に1)、2)を行い、平成19年度は上記3)を行った。2004年の浅間山噴火では5度の中規模噴火が発生した。震源域で作用する下向きの力の強度は地震波形を解析することによって得られた。また、大気中へ注入されるガスや火砕物の注入レートの変化に依存する空振波形の振幅は、観測された空振波形の解析により得られた。地震波形解析と空振波形解析の結果を比較したところ、震源域で作用した下向きの力と火口から大気へと注入された火山ガスや火砕物の注入レートの変化率の比が噴火ごとに大きく異なることがわかった。例えば、9月1日の噴火は下向きの力の強度に比べて空振振幅が異常に大きなイベントであり、逆に、9月23日の噴火は下向きの力の強度に比べて空振振幅が異常に小さなイベントであった。噴火ごとの違いは、火口をふさぐ溶岩や火砕物の蓋の厚さが噴火ごとに数倍から数十倍異なれば説明できる。期待される蓋の厚さの変化は、航空機SARにより観測された火口底の標高の変化と調和的であった。
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Special Publication of the Geological Society of London, "Fluid Motion in Volcanic Conduits: A Source of Seismic and Acoustic Signals" 掲載確定