本研究では、既存データに基いて古地磁気強度の急増が起きたといわれる25 億年前付近の古地磁気強度の復元をめざし、18億年前・26億年前の放射年代をもつミネソタ花崗岩類をそれぞれ複数サイトで採取した。既存の先カンブリアの古地磁気強度データは、初生の熱残留磁化を獲得・保持している試料であるかどうかという岩石磁気学的な検討が不十分であるものも多い。そこで、ミネソタ花崗岩類の岩石磁気特性の測定を行い、花崗岩の自然残留磁化の起源を調べた。 1) 花崗岩のバルク試料に対して極低温(6K)で飽和残留磁化を与え、室温までの温度変化を測定した結果、いずれのサイトの試料も磁鉄鉱のVerwey点付近(120K)で大幅な減少を示す。このことから、磁鉄鉱(チタンに乏しいチタン磁鉄鉱)が主要な残留磁化のキャリアである。 2) 室温飽和残留磁化の室温-極低温-室温サイクルにおける温度変化によると、飽和残留磁化の10-80%はisotropic point(約130K)で失われるが、20-90%は低温メモリとして残留する。この結果は、これらの花崗岩は形状異方性をもつ単磁区磁鉄鉱粒子を含むことを示す。いくつかのサイトについては、分離した長石・石英に対する低温磁気特性の測定を行った。その結果、長石や石英に単磁区磁鉄鉱を含むサイトがあることが分かった。 3) Miniscope(HITACHI TM-1000)を使って薄片の反射電子像を観察したところ、斜長石・アルカリ長石・石英の中にサブミクロンサイズの磁鉄鉱粒子を確認した。以上の結果に基づくならば、ミネソタ花崗岩類のシリケイト鉱物中には、単磁区磁鉄鉱粒子が存在し、それらが初生の熱残留磁化を獲得・保持している可能性が高い。 4) 貫入岩テストを念頭に置いた玄武岩質岩脈の磁化方位を測定し、磁鉄鉱粒子をキャリアとする初生磁化を確認した。 以上のことから、太古代花崗岩の初生磁化の検出と古地磁気強度測定が可能であることを示した。
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