2006年7月16日にインドネシア・ジャワ島沖で大きな「津波地震」が発生した。この地震は、世界的な広帯域高感度デジタル地震計観測網が設置されてから4個目の津波地震であり、最近10年間では最初のものである。また、津波地震は本研究の主要な研究対象の一つでもある。そのため、平成18年度は主としてこの地震の遠地実体波波形解析に取り組むこととした。津波地震は海溝の非常に浅い場所で発生すると考えられているが、弾性歪みエネルギーをどのように蓄えて地震発生にいたるのか、その過程はまだ必ずしも明らかにはなっていないと思われる。本研究では、差分法で計算した遠地実体波理論波形を用いて断層面上での震源過程を詳細に解析することにより、すべり量の大きな場所(近似的には大きな歪み蓄積があったと思われる場所)の位置や深さを特定することを目的としている。また、断層面や破壊開始点の位置情報推定のために、波形にもとづいて余震位置を再決定することも実施した。余震解析では、波形による最決定位置がルーチン解析の位置よりも30km近くも海溝寄りになる例を見出した。このことは、ルーチン解析で決められている本震の破壊開始点も実際にはより海溝寄りであった可能性を示唆する。すべり量分布解析では、有効パラメータ数の概念(Hastie and Tibshirani 1990)を導入して、最適解をAICによって推定する拘束条件つきの非線型逆問題解析手法を開発し、解析を継続しているところである。これらの成果は、2006年地震学会秋季大会、2006年アメリカ地球物理学連合秋季大会などで発表した。また、並列計算機を導入してシステムソフトウェア等の整備を行い、解析に利用した。
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