研究概要 |
本年度は、昨年度に引き続いて2006年ジャワ津波地震の解析を継続した。さらに、2007年9月12日にはジャワ海溝に隣接するスマトラ海溝でMw8.4の巨大地震(2007年南スマトラ地震)が発生した。そのため、本年度はこれらの重要な地震の解析に集中的に取り組むこととした。2006年ジャワ津波地震の解析では、すべり量分布の逆解析手法の解像度をチェックするためにシミュレーションを実施した。まず、現実的な地球内部構造を仮定して、2.5次元差分法によってジャワ津波地震を想定した仮想地震による合成データを生成した。そして、合成データ生成に用いたものと同じ2.5次元グリーン関数(理論波形)を使用して逆解析を行うと、仮定したすべり量分布のパターンに近い解が得られた。ただし分解能が完全ではないため、すべり量の絶対値は小さくなる。一方、標準地球モデル(1次元モデル)を用いて生成したグリーン関数を使用すると、仮定したすべり量分布とはかなり異なるパターンの解が得られる場合も見出された。これらのシミュレーション結果は、逆解析の結果を解釈するうえで重要な情報となる。2007年南スマトラ地震では、余震の波形解析によってスマトラ海溝の地殻構造を推定することを試みた。その結果、観測波形に見られる後続波形をかなり良く再現できるモデルを見出した。しかしまだ完全ではないので研究を継続する必要がある。本震のすべり量分布解析も行い、比較的に浅い部分(深さ約20km程度)にも大きなすべりがあったらしいことなどの暫定的結果を得た。これらの成果は国内外の学会で発表した。また、成果の一部は図書(Advances in Geosciences, World Scientific Publishing Co.)に寄稿した。これは2008年度に出版される予定である。
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