本研究課題は固体地球、海洋、大気を含めた全地球複合系の波動場計算を目指したものである。平成18年度の計画は(1)全地球複合系における種々のモード計算、(2)計算したモードをモード重ね合わせ法で波動場にするプログラムの開発を行った。(1)に関してはこの研究課題の準備段階で開発した新しいモード計算法で行った。この方法は固体地球の非弾性効果や大気上部での波動場の放射境界条件を取り入れたもので、複素数となるモードの固有周波数を安定かつ効率的に計算する方法である。この計算法を著した論文はGeophysical Journal Internationalに掲載された。モード種として手始めに伸び縮みモードの基本モード(Rayleigh mode)と海洋重力波であるTsunami modeについて計算した。それぞれ、angular degreeが10000まで計算した。Angular degreeが大きなモードは水平方向の波長の短いモードであるが、表面付近にエネルギーが集中するモードである。このため、粗いグリッドでは精度が出ない場合もあるので、計算結果の精度に応じて自動的にグリッドを細かくする工夫を行った。(2)の計算法に関してはダブルカップル点震源に対して励起される波動場を重ね合わせ法によって計算するプログラムを作成し、実際に波形を計算した。計算コードが正しく行っていることを確認するために、大気中の爆発源に対するRayleigh波を計算した過去の文献と照合し、振幅、波形の形とも合っていることを確認した。そこで、スマトラ巨大地震およびピナツボ噴火を模した単純化した震源に関してRayleigh波、Tsunami波を固体地球から大気上層迄をモード重ね法で計算した。Rayleigh波の大気中の伝播は上方に音速で伝播し、Tsunami波の大気成分は大気重力波として振る舞う結果を得た。これらの結果は2006年のAmerical Geophysical Unionの秋季後援会で報告した。
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