研究概要 |
今年度は、年次計画に従って、熱水流動シミュレータから得られる火山体内部の温度・圧力分布等を用いて、地表での地磁気変化を計算するモジュール群の開発を行った。まず、熱水流動シミュレータとして、USGSで開発されたHydrotherm(Ingebristen and Hayba,1994)を選定し、それぞれのモジュール群のデザインを行った。Hydrothermは、熱水の物理状態量としてエントロピーを用いているため、1200℃,1000MPaまでの問題を扱うことが可能であり、1000℃程度のマグマが熱源となる我々の問題にも容易に適用できる。 モジュール群の開発は、界面導電効果モジュールの開発にやや遅れが見えるものの、熱磁気効果および圧磁気効果モジュールも含めて順調に進んでいる。2次元軸対象の熱水流動モデルを採用し、各時間ステップで出力される間隙流体の温度分布・圧力分布・流速等を入力として用い、それぞれのモジュールによって地表の任意の場所における磁場変化が計算できるようにした。また、桜島火山や最終年度に実データとの比較を行う口永良部島火山において岩石サンプルを採取し、残留磁化等の測定を行った。ただ、これらのデータをモジュール群に組み込むところはサンプル数が少ないこともあり、来年度の課題として残った。現在は、熱消磁曲線を温度の一次関数で近似したものを使用している。予備的なシミュレーションとして、母岩の浸透率の違いによる磁場変化を調べたところ、浸透率の小さい方が地磁気変化は大きくなり、変化の継続時間も長くなることが確認され、予想通りの結果が得られた。 なお、使用した経費のうち、物品費の大半は計算機およびソフトウェア等のモジュール群開発のための環境整備に使用し、旅費は、米国地球物理連合秋季大会をはじめとする国内外での成果発表および岩石サンプルの採取等に使用した。
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