今年度は、昨年度に引き続き、熱水流動シミュレータ(Hydrotherm)から得られる火山体内部の温度・圧力分布等を用いて、地表面での磁場変動を計算するモジュール群の開発を行い、これをほぼ完成させた。その上で、一連の計算ルーチンを用いて、マグマ貫入後の地磁気変化に及ぼす影響について、山体母岩の浸透率の効果と、浸透性の悪いキャップロックの存在効果を調べた。その結果、母岩の浸透率は、地磁気変化の継続時間、変化量、分布に大きく影響することがわかった。これは、浸透率が大きいほど、熱水対流系が広くかつ長時間維持されるためであると解釈された。キャップロックの存在効果については、特にキャップロックの直上周辺で、特異な磁場の時空間分布が得られた。キャップロック直下では大きな間隙圧が生じるが、異常磁場として観測されるのは、マグマ貫入直後ではなく、一定時間経過後であることがわかった。 しなしながら、解決されていない問題もいくつかある。全てのモジュールに関係する、山体磁化の温度依存性については、今年度までに採取した11の岩石サンプルについて、段階熱消磁実験を行い磁化-温度曲線を得たが、サンプルによって曲線にばらつきがあり、モジュールに組み込むためテーブル化する際の精度があまり良くない。サンプル数をさらに増やす等して、改善する必要がある。また、圧磁気効果モジュールについては、計算が煩雑なため、磁場計算の際に地形を考慮できておらず、これも改良の余地が残されている。なお、これらの研究成果は、イタリア・ペルージャ大学で開催された国際測地学・地球物理学連合2007年総会において発表し、国際誌にも投稿した。使用した経費のうち、物品費の大半は、モジュール群開発のためのソフトウェア等の購入や英文校正費に使用し、旅費は、成果発表および岩石サンプルの採取等に使用した。
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