昨年度から引き続き行ってきた、熱水流動シミュレータ(Hydrotherm)から得られる火山体内部の温度・圧力分布等を用いて地表面での磁場変動を計算するモジュール群の開発を完了した。懸案であった圧磁気効果モジュールにおける地形の組み込みも計算できるようになったことから、開発した一連の計算ルーチンを用いて、観測された火山性磁場変動を説明するモデルの構築を試みた。対象火山は、口永良部島火山およびメラピ火山(インドネシア)を選定した。口永良部島火山では、2001年頃から観測されている火山性磁場変動が、熱磁気効果によってほぼ説明できることが示された。岩石磁気実験の結果、チタン磁鉄鉱に富む岩石が7割程度を占めることが明らかになったが、それらの岩石の持つ磁化では、観測結果を説明できず、残り3割程度の磁鉄鉱に富む岩石が熱磁気効果を作る主成分であることがわかった。また、熱消磁に要する温度は、火口地下浅部で500℃程度と推定され、火山ガスの成分比から推定される地下温度(450〜550℃)と整合性が良い。メラピ火山では、1992年の噴火に先立つ磁場変動が圧磁気効果であると解釈されていたが、これを再現するシミュレーションを試みた。その結果、観測された火山性磁場変動を説明するためには、深さ8km程度に想定される深部マグマ溜りへのマグマ貫入のみでは説明できず、深さ1.5km程度の浅部マグマ溜りにも貫入する必要があることが示された。なお、これらの研究成果は、アイスランド大学で開催された国際火山学・地球内部化学協会(IAVCEI)2008年総会において発表し、複数の国際誌に投稿中である。使用した経費のうち、物品費の大半は計算機とその周辺機器の購入に使用し、論文投稿前の英文校正費にも使用した。旅費は、国内外における成果発表および岩石サンプルの採取に使用した。
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