研究概要 |
平成18年度は多くの地震波データを収集した。データは防災科学技術研究所(NIED)のHi-netやF-netで記録された地震波記録や気象庁、国立大学地震観測網、NIEDで得られたP波初動到達時刻である。まず、中国地方を南北に横切るように観測点(馬路、成羽、三野)を選び,それぞれの観測点の波形からレシーバ関数を計算し、その特徴を調べた。その結果、四国南部では、フィリピン海プレートと地殻下部が接触していることが明らかとなった。また、成羽観測点及び馬路観測点については、地震波異方性を起こす六法対称軸が下部地殻から海洋性地殻で北西-南東から南-北の方向に向いていることを示した。また三野観測点については、下部地殻では対称軸が北西-南東から南-北に向いた異方性、海洋性地殻では南-北に向いた異方性が存在することを示した。また、水平成層異方性速度構造を伝わる地震波のレシーバ関数を合成し、異方性がある場合、速度不連続面でのPs変換波の極性が逆転することがある事を確認した。これは、等方性速度構造で見られる変換波の極性が異方性速度構造では異なることがあることを意味する。また、レシーバ関数のPs変換波にS波スプリティング解析法を適用し、地殻内部の異方性を推定する方法を開発した。一方、初動到達時刻データの逆解析を行い、東海・関東地方の三次元P波異方性速度構造を推定した。その結果、糸魚川-静岡構造帯の地殻では南北系の異方性が顕著であることを示した。関東地方の深さ25kmから40kmでは東西系の異方性が見られ、これは、フィリピン海スラブの異方性であることが判明した。さらに、深さ55kmから70kmの上部マントルでは、南北系の異方性が現れ、これは太平洋スラブの異方性であると解釈した。さらに、九州地方に於いて、異方性速度構造の解析に影響を及ぼすと考えられる地殻内部の速度不連続面(コンラッド面やモホ面)の凸凹の形状をP波到着時刻データから推定した。
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