研究概要 |
断層長(Ls)をパラメータとする規模予測の経験式ではその規模を十分に見積もることができないという問題や,強震動の計算に重要な震源断層のパラメータの評価について,本研究では,(1)世界の地震・活断層データを用いて,統計的に規模予測式を検討すること,(2)アスペリティのデータが得られている世界の地震データを用いて,活断層の地表パラメータと震源断層パラメータの関係性を示し,活断層の地表パラメータを用いて規模のばらつきを説明可能なモデルの作成を行うこと,について作業を行った. 地震・活断層データを整理・統合したデータベースより,活断層の進化・発達モデル(Wesnousky,1999)を定性的な根拠として,活断層の成熟度に関係して断層面の摩擦が異なり,断層がすべりを起こしたときの応力降下量に相違が生じると仮定した.しかし,予測の観点から,応力降下量(Δσ)の代わりに,それと正の相関を示す活断層の平均活動間隔(R)を用いることとし,重回帰分析を行った.その際には,活動間隔の推定誤差と多重共線性の評価のためにシュミュレーションも行い,以下の規模予測式を得た. Mw=(1.13±0.02)logLs+(0.16±0.02)logR+(4.63±0.09)・・・(1) これによると,例えばRが10倍異なるとMwが0.2異なることとなる. 次に,活断層の地表パラメータと震源断層パラメータの関係性ついて,地震規模はLsから決定される基本量と断層の成熟度に関係する調整量で表されると仮定した重回帰式を検討した.サンプル数がまだ十分ではなく,現時点では統計的に有意な成果とは言えないが,地表の断層形態に切れ目が多く断層が未成熟なほど,観測された応力降下量と幾何的に求めた応力降下量の差(Δ(Δσ))が大きくなる傾向を認めた.
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