地球および核の形成に関わる重要な闇題である地球の核の化学組成と、地球磁場や回転のダイナミクスに密接に関連する核マントル境界(CMB)の凹凸について、本研究では、(1)外核の化学的組成(軽元素組成)に関する不連続的成層構造の有無と、(2)CMBの短波長の地形(凹凸)について、地震学的に制約を加え、物質科学的検討を行った。 (1)P4KP波の解析のためにアレイデータの蓄積及び処理方法の整備を行った:日本のHINET、北米西海岸微小地震アレイ、で記録された地震についてP4KP波など。の波形データを解析した。アレイ処理の方法は、マントルや火山微動の研究にも利用され成果を収めた。 (2)P4KP波の重合波形のモデル化を行った:Reflectivity法、Fullwave法により、CMB近傍の様々な一次元速度モデルに対してP4KP波の波形計算を行い、観測されたP4KP波波形と比較して、外核最上部の厚さ2km以下の低密度層の存在の可能性は低いと推論した。 (3)P4KP波とPcP波に対するCMB地形の効果を見積もった:Gaussian-Beam法及びKirchhoff-Helmhortz法により地形効果を評価した。観測される方位異常との比較を行いCMBの凹凸の程度を見積もりを試みたが、マントル不均質の効果を完全に取り除くことは困難だった。波形計算の方法はマントル深部の微細構造の調査にも利用され成果を上げた。 (4)PKP波の解析結果と鉄溶液モデルを併せて検討した:Fe-S-O系の溶液モデルとそれに基づく外核の弾性波速度推定を行い、均質な組成の温度圧力効果のみで説明可能かどうかを検討した。
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