研究課題/領域番号 |
18540425
|
研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
松本 剛 琉球大学, 理学部, 教授 (30344287)
|
研究分担者 |
中村 衛 琉球大学, 理学部, 助教 (60295293)
新城 竜一 琉球大学, 理学部, 教授 (30244289)
木村 政昭 琉球大学, 理学部, 名誉教授 (20112443)
小野 朋典 琉球大学, 理学部, 教務職員 (70233583)
久保 篤規 高知大学, 理学部, 准教授 (60403870)
|
キーワード | 海洋科学 / 海洋探査 / 自然災害 / 地震 / 津波 |
研究概要 |
津波シミュレーションの計算精度を向上させるべく、非線形長波式を用いた差分法と2次元VOF法とを比較し、計算手法の違いによる遡上過程の違いを調べた。計算ではリーフ地形の存在も考慮し、沖合から周期60〜600秒のGauss型波を入射して、その遡上高を調べた。その結果、非線形長波式とVOF法両方で、リーフの有無にかかわらず津波が短周期となるに従って遡上高が高くなる傾向が見られ、特に周期200秒で遡上高が最も高くなった。また、周期200秒付近では、リーフの有る場合のほうが無い場合より遡上高が高くなることが明らかになった。 琉球弧の前弧域・背弧域について、防災科学技術研究所のF-netメカニズム解をもとに応力逆解析を行った。その際、一般的に行われている応力逆解析と異なり、データセットの中に複数の応力場によって駆動された断層すべりデータを含む多重逆解法を用いて、沖縄トラフ側と沈み込み帯側に生じる応力場をそれぞれ求めた。またmisfit角を用いてそれぞれの地震の断層滑りが、得られたどの応力場で動いたのか特定し、その分布から応力場の空間的な不均質性を調べた。結果として、沖縄トラフと前弧域の応力区の区分を解析者の主観なしに決める事ができた。また、沈み込むプレート内の応力場の不均質も同様の方法で調べ、琉球弧北部でのdown-dip extension南部でのdown-dipcompressionやその遷移の様子が求められた。 2006年ジャワ津波の際、ジャワ島南岸で最大7.7mの浸水高を記録している。余震域に当たる前弧域を2004年及び2005年に「みらい」が通過していたので、取得された精密地形データをまとめたところ、スマトラ沖から連なる活断層Mentawai Faultの上に大規模なamphitheatre地形が多く見られた。水平規模は8〜20kmであり、凸地形の比高は最大級のもので1000mを超えている。中には、再大で4m程度の波高の津波を引き起こすことが推測されるものも含まれている。海岸での津波の波高分布を考慮すると、地震の際にこれらのamphitheatreで生起した海底地辷りが巨大津波を起こした可能性もある。また、余震のメカニズムによれば前弧域で張力場が卓越し、南琉球域と酷似している。 2007年12月米国サンフランシスコで開催されたAGU Fall meetingに3名が出席し、それぞれ、上記の結果を中心とした研究発表を行った。その他、3名で手分けして、低周波地震、東アジアのテクトニクス、死海トランスフォーム断層、古地震調査、津波警報、メガスラスト滑りと前弧の構造、南米沈み込み帯のジオダイナミクス、中央海嶺軸のオフセットとセグメント化、自然災害のリモートセンシング観測、拡大する背弧海盆などのセッションを聴講し、また、ポスター会場での発表者との議論を行った。以前は海底地辷りによる津波モデリングの発表件数は僅少であったが、今回は多くの発表があり、被害津波の原因としての海底地辷りが相当注目されていることを示している。
|