火星大気へのダストの効果を調べている。今回印刷した論文1では、火星大気中にダストが多い場合の応答実験を行った。比較の為に、全球ダストストームが起きた場合と、全球ダストストームが起きない普通のダスト量の場合と、2つの数値実験を行い、比較検討した。秋季にはそれほど変化がみられなかったので、特に、北半球冬季の大気中の傾圧波動の振る舞いを比較検討した。火星の北半球冬季では、全球ダストストームが起きた時とそうでない時で、大きな違いがみられた。全球ダストストームが起きた年は、火星大気が安定化し、また平均東西風が弱まることで、傾圧波動の振幅が大きく減少したことは、以前から観測していた地上の振幅結果から推測されてはいたが、このモデルにより、具体的原因とそれによる結果として傾圧波動の振幅減少が示されたことは、大きな成果と考えられる。 また、論文2では、地球大気に存在する北極振動と同様の振動が火星大気モデルで再現されたので、その解析を行い、火星大気中の北極振動に関する研究を行った。地球大気と比較して北極振動の周期が短くなり、またその生成は火星大気の中の傾圧波動によることが示された。これらの結果は、地球大気のものに比べ、かなり異なる様相を示していて、興味深い結果となっている。 火星ダストについて、ダスト巻き上げ実験を繰り返し行っているが、普通のダストストームは再現されるようになったが、全球ダストストームの再現までには至っていない。
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