夏季東アジアモンスーンのオンセットと変動に関連するテレコネクションパターンを調査した結果、2種類のEJパターン(EJタイプ1とEJタイプ2)のうち、オホーツク海高気圧の変動を良く説明する正のEJタイプ2 (EJ2^+)と負のPJ (PJ^-)が複合すると、東アジア地域の対流圏中層の高度場に顕著な三極構造(オホーツク海とフィリピン北方の北西太平洋に正偏差、日本に負偏差)が出現する。EJ2^+とPJ^-のテレコネクションの複合効果は、東アジア北東部において単独のテレコネクションよりも大きな地上気温の低下をもたらしており、夏季東アジアモンスーン循環に実質的な影響を与えていることが見出された。また、LF成分のテレコネクションの複合によって、日本周辺海域において明瞭な海面水温の低下が生じている。LF-EJ2^+パターンとLF-PJ^-パターンは共に1980年以降、頻繁に出現する傾向があり、結果として、LF成分でのテレコネクションの複合事例が過去20年間で増加した可能性がある。特に日本における、降水量増加を伴う極端な冷夏(例えば、1993年、2003年)はしばしばそのようなLF成分の複合によって生じている。 また、夏季アジアモンスーンの季節進行における段階的なオンセットのプロセスを大気海洋結合大循環モデルで調べた結果、東南アジアの5月中旬のオンセットは広域の温度コントラストの反転が主要素であること、対照的に、6月中旬のオンセットではSST効果は対流活動の活発化に対し負のフィードバック効果として働いていることが明らかになった。
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