研究課題/領域番号 |
18540438
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
辻野 博之 気象庁気象研究所, 海洋研究部, 主任研究官 (50343893)
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研究分担者 |
碓氷 典久 気象庁気象研究所, 海洋研究部, 研究官 (50370333)
中野 英之 気象庁気象研究所, 海洋研究部, 研究官 (60370334)
藤井 陽介 気象庁気象研究所, 海洋研究部, 研究官 (60343894)
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キーワード | 黒潮 / 海洋大循環モデル / 海洋データ同化 / 特異ベクトル / アジョイントモデル |
研究概要 |
日本南岸における黒潮の非大蛇行流路から大蛇行流路への遷移について、その前兆となる九州東方沖に形成する小蛇行からの影響を調べるため、小蛇行の形成要因の解明と、大蛇行の規模や強度に直接的な影響を及ぼす要素(特異ベクトル)の抽出実験を行った。 1.大蛇行の形成に直接的な寄与をする小蛇行の形成要因を調べるため、2004年夏季に現実に発生した大蛇行流路のトリガーとなった九州沖小蛇行の形成メカニズムを調べた。この小蛇行の形成には,黒潮再循環域から西方伝播してきた低気圧性渦の到達と東シナ海からの高渦位水を伴った前線波動の到達が重要な役割を担っていたことが明らかになった。低気圧性渦は、トカラ海峡沖の黒潮流路を沖側へ引き出し、内側域に低気圧性アノマリが形成される。このアノマリに東シナ海からの高渦位水が取り込まれて九州沖に蓄積され、小蛇行が形成される。また、この高渦位水を伴った前線波動は、台湾沖における黒潮と高気圧性渦との衝突により生成されたことも明らかになった。 2.九州沖に形成した小蛇行のどのような構造的な変化がその後の大蛇行の規模などに影響を与えるのかを調べるため、特異ベクトルの抽出アルゴリズムを作成し、抽出実験をおこなった。特異ベクトル抽出アルゴリズムの作成にあたり、高周波の変動を取り除き、計算を安定して行う手法を新たに考案し、九州沖の小蛇行付近における感度を取り出すことができるようになった。また、同手法を用いて、数値モデルによる黒潮大蛇行のシミュレーション結果について、発生の2ヶ月前にどのような擾乱を加えると黒潮大蛇行流路への影響が大きいかを解析した。その結果、黒潮上流側から伝播しながらそれ自体が傾圧不安定により発達し、最終的には大蛇行の形成を助長するような擾乱が、特異ベクトルとして抽出された。このことは、傾圧不安定により最終的な黒潮流路の状態が大きく影響されることを意味し、黒潮大蛇行の形成に対する傾圧不安定の重要性を指摘した過去の研究を支持する。
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