研究課題
従来から研究が進められている地磁気擾乱時の伝搬性大気擾乱(Traveling Atmospheric Disturbances:TADs)に加えて、地磁気静穏時のTADの特長について調べた。地磁気静穏時では、昼夜境界、真夜中の温度極大、オーロラ・オーバル付近からTADsが励起される可能性をGCMシミュレーションからはじめて示すことに成功した。さらに下層大気起源の大気構造がTAD伝搬に及ぼす影響について調べた。下層大気の影響によってTADの振幅は大きく変動し、また、日々変動する下層大気の影響のため従来観測されているようなTADの多様性が生み出される可能性が新たに指摘された。下層大気に起源を持つ大気重力波は、熱圏領域での大気変動を引き起こす重要な運動量・エネルギー源であると考えられている。本研究では、熱圏領域に見られる大気重力波の特徴について調べた。高度約100kmでは、水平波長2000km、1000km、500kmの重力波の周期はおよそ6、3、1.5-2時間と計算され、高度とともに主な重力波の周期は短くなるなどの特徴が示された。国際共同で北極域に設置されている大型大気レーダー(European Incoherent Scatter radar:EISCAT radar)と、同じく極域のHFレーダー観測網を担うCUTLASSレーダーによる同時観測から、磁気圏前面での太陽風エネルギー流入現象に伴うと考えられる熱圏大気加熱現象をとらえることに成功した。極冠域で上部熱圏大気が強く加熱されている直接的な証拠を見出すとともに、この加熱による大気擾乱の可能性が指摘された。このようなレーダー観測とGCMシミュレーションにより、極冠域での熱圏大気変動の理解が今後さらに進展するものと期待される。
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Journal of Geophysical Research 113
ページ: doi:10.1029/2007JD008874
Annales Geophysicae 25
ページ: 2393-2403