研究課題
平成20年度は、磁気圏から赤道電離圏への電磁エネルギー流入が、太陽風磁場により強くコントロールされる事例とサブストーム時の過遮蔽発生を詳細に解析し、以下の2点の成果を得た。(1)2006年12月に発生した磁気嵐の開始時に、周期約30分の準周期磁場変動が高緯度および磁気赤道で観測された。磁場変動から推定される赤道電離圏電流が、磁場の正負の変動に対応して、東向きと西向きであることを見いだした。さらにSuperDARNレーダーにより観測された電離圏対流パターンは、正負の電離圏電流に対応して、領域1型(R1)および領域2型(R2)沿磁力線電流(FAC)が発達したことを示した。この結果は、磁気圏で発生した電磁エネルギーがR1およびR2 FACを伴って極域電離圏へ流入し、さらに赤道電離圏へ流入することを示している。この電磁エネルギー伝送メカニズムは、磁気嵐だけでなく、般的な地上磁場変動に際しても有効に働くメカニズムであることを結論した。(2)サブストーム爆発相とほぼ同時に発生する過遮蔽の特性を、2003〜2005年のグローバル磁力計網とSuperDARNデータを用いて抽出した92事例で調べた。その結果、サブストーム発生と同時に昼側サブオーロラ帯や磁気赤道で過遮蔽電流が発生すること、そして、過遮蔽電流は、オーロラジェット電流が夜側を中心に発達するのに対していきなり昼側で始まるのが特徴である。過遮蔽電流は、午後側オーロラ帯の低緯度側境界付近に流れ込むR2 FACによりドライブされ、中緯度電離圏を経て、西向きの赤道ジェット電流に結合する。また、R2 FACが非対称環電流により駆動されるために、サブストーム時に赤道ジェット電流-R2FAC-非対称環電流の電流回路が形成されると結論される。これは、夜側のカレントウエッジがつくるサブストーム電流系とは異なっており、サブストーム時には2種類の電流系が発達することが結論される。
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (15件)
Midlatitude Ionospheric Dynamics and Disturbances, AGU Geophysical Monograph Series, edit. P. M. Kintner Jr., A. J. Coster, T. Fuller-Rowell, A. J. Mannucci, M. Mendillo, and R. Heelis. 181
ページ: 145-155
Journal of Geophysical Research, doi:10.1029/2007JA012628, American Geophysical Union 113
ページ: doi:10.1029/2007JA012628
『第3回磁気圏-電離圏複合系における対流に関する研究会』プロシーディングス、名古屋大学太陽地球環境研究所
ページ: 76-84