研究概要 |
Yukimatu and Tsutsumi,GRL,2002で開発した、SuperDARNレーダーを用いた、生時系列観測・解析手法を発展させ、2周波数及び多周波数の周波数領域干渉法(FDI)をSuperDARNレーダー制御ソフトに組み込む開発を2006年度に行い、2007年2月に取得されたEISCAT Tromsoの電離圏加熱装置で人工励起された沿磁力線不規則構造(FAI)の観測データの解析を精力的に進めた。まず、単周波生時系列観測データの解析からは、ドップラースペクトルの中に、相関時間や時間発展の異なる2つ乃至3つのスペクトル成分が共存していることが初めて見出され、更に、位相の「とび」の解析から、観測領域内部のFAIの消長と直接的に関係している可能性が高いことが示された(論文準備中)。多周波FDI観測データの解析から、通常のレンジ分解能である15kmの内部の構造が求められ始めた。しかし、FDIデータ解析には、初期位相の決定が不可欠であり、これを当初、同時観測された近距離流星エコーから求め、これを遠方のFAIデータに適用しようとしたところ、正当な解が求められないという問題点に行き当たった。この問題を解決すべく、遠方FAIデータ自身を用いてある仮定の下初期位相を決定し、レンジ方向の分布の時間発展を求めることを試みたが、この解の一意性は、正しいと考える予想はあるものの、まだ証明できていない。また、開発されたFDI観測手法が、通常の不等間隔マルチパルス法によるACF観測を損ねない前提で開発された為、1FDI観測にかかる時間が長く、これが短い相関時間に対応した現象の再現を阻害しているものと推測された。この為、2007年度では、マルチパルス法をやめ、SuperDARNで初めてとなる、シングルパルス及びダブルパルス法によるFDI観測モードの開発を行い、2008年2月14日〜3月15日に英国レスター大学(Mark Lester教授)を訪問し、一年前同様電離圏加熱装置による人工励起FAIのSuperDARNで初となるシングルパルスFDI観測を実施し、良好な観測データを取得することができた。FDI観測手法の改善により、高空間・時間分解能観測の確立をみることになるか、現在データを鋭意解析中である。また、デジタル受信機を用いたSuperDARNレーダー観測の為のソフトウエア開発も進められ、この設置作業の準備も行った。
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