研究概要 |
本研究の目的は,(1)日本列島における代表的な大陸性基盤と考えられる飛騨帯(〜隠岐帯)および類似の地質体における花崗岩活動の特徴を明らかにし,(2)アジア大陸の先カンブリア時代基盤を構成する花崗岩との類似点と相違点を解明することである.この目的に沿って本年度は以下の研究を実施した. (1)-1 飛騨山地の白亜紀後期〜第四紀にいたる比較的若い時代の花崗岩について,白川地域から黒部川〜北アルプス一円にかけて各岩体をほぼ網羅的にサンプリングを行い,記載岩石学的研究と全岩化学分析を実施した.この結果,飛騨山地の広範囲にわたって,約1億年前から100万年に至る期間で,ほぼ同様の性質の島弧的花崗岩の形成があったことが分った.また古生代〜中生代前期の花崗質岩についてもサンプリングと全岩化学分析を行った.飛騨帯に関しては古生代から第四紀まで,代表的な岩体の現物試料を手にすることができ,記載データを集積中である.また研究分担者(今岡)によって西南日本の花崗岩のAMS特性の解析が進んだ. (1)-2 従来飛騨帯の西方延長と考えられてきた隠岐島後の花崗岩類を調査の結果,基盤の片麻岩類に伴って,これまで知られていなかったS-タイブ的花崗岩(珪線石や柘榴石を含む白雲母花崗岩)を発見した. (2)-1 アジア大陸における代表的な先カンブリア時代地塊であるインドダルワールクラトンの花崗岩類について,地球化学的研究とともに鉱物の化学組成を知るためEPMA分析を行った.本年は研究代表者が渡印することができなかったので,共同研究者であるバンガロール大学のDr.Jayanandaをサンプル持参で山口大学に招聘し,特に始生代末のクロスペット花崗岩の性質とその周辺に見られる高温(〜超高温)変成作用について検討した.また研究分担者(大和田)によって,飛騨帯と良く似た地質的・時代的背景をもったベトナムコンツム地塊の花崗岩研究が進展した.
|