研究概要 |
近年東アジアの変動帯は様々な解析が行われ,アジア大陸が古生代末から中生代初期(3億〜2億年前)にかけて微小大陸の衝突によって形成されたことが明らかになってきた.このような衝突イベントは大陸成長を考慮する上で重要である.しかしながら,衝突帯の深部過程の基本的な理解は十分に解明されていない.本研究の目的は大陸成長に関する深部地殻のテクトニクスを火成作用と変成作用の観点から解明することにある.今年度は3カ年計画の初年度にあたり,主に野外調査によって,衝突帯の地質現象を把握するとともに,西南日本内帯で代表される沈み込み帯における火成・変成作用との比較を中心に検討してきた.今年度の研究実績は以下の4点に集約される. 1.北部ベトナム地域の地質調査を実施し,解析に役立つ試料を多数採集できた.採集試料の特徴は,これまで発見されなかった地殻深部起源の岩石を含み,この地域がアジア大陸形成時の衝突帯に相当することを証明することができた. 2.アジア大陸につながりをもつ日本の代表的な地質帯である飛騨帯の地質調査を実施し,多数の試料を採集した.飛騨帯は従来角閃岩相に相当する変成岩類が広く分布するとされてきたが,今年度の調査によってさらに深部地殻を構成するグラニュライトが新たに見いだされた. 3.中部ベトナムの衝突帯に産する火成岩類から火成活動の年代として260Maを得た.この年代が中部ベトナムの衝突イベントに相当することを見いだした. 4.火成岩類のうち,マントル起源の玄武岩質マグマについては,化学組成の特徴からマントル深部に由来するマグマと衝突以前の沈み込みによって汚染されたマグマの混合によって生じたことを明らかにした,一方,地殻起源の花崗岩マグマは衝突の結果生じた厚い地殻の深部における部分溶融によって生じたことが明らかになった.このようなマグマの特徴は,東西ゴンドワナ大陸の衝突帯からも見いだされた.
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