研究概要 |
平成18年度の調査・実験は以下のようにまとめられる.すなわち, 1.誓願時軽石層を例とした火砕流堆積物を検討した結果,(1)下部において高領域の流れを示すなめらかな浸食面が繰り返し形成され,そこには細粒砂と重鉱物が濃集すると同時に顕著なインブリケーションを示すこと,(2)いっぽうで中部にはトラフ状浸食を繰り返したこと,(3)偽礫とその痕跡を含むこと,(4)塊状部・トラフ充填部にも低角度のインブリケーションを示すこと,(5)上部には成層・葉理があり乱流渦のあったこと,などが明らかになった. 2.上総層群の塊状タービダイト砂岩層を検討した結果,多重逆級化層および上記の火砕流堆積物の特徴(1)〜(4)と共通した構造があることが明らかになった. 3.これらはいずれも低濃度の浸食的な混濁流下において,渦の抑制された掃流輸送による堆積から始まったことを示している. 4.小規模な低濃度重力流の水槽実験を行った結果,急斜面を用いて砂床面上のせん断力を確保した場合に,アンチデューン様のベッドフォームが遡上し,それによる逆級化層の形成が見られた.このとき顕著なインブリケーションが形成される.この構造は,上記の浸食面構造(多重逆級化構造)と共通している. 5.今後の課題として,(1)トラフ状浸食がフルートマークのような乱流によるものなのか実験的に検証する必要がある;(2)側方に追跡可能な塊状タービダイト砂岩層において,流れ方向の堆積様式の変化を把握する必要がある;(3)非現実的な急斜面に頼らない重力流実験のため,低比重粒子を用いた実験を行う;などが残された.
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