研究概要 |
地震性ノンテクトニック断層型開口クラックから狭義の地すべり(徐動性地すべり)へという時系列的変化のモデルを構築する証拠を収集した。硬岩からなる付加体では、斜面変動は尾根の不安定化からはじまる。大引き割、笹ヶ峰、つえ谷では、多数の開口クラック群によって尾根が裂けているが、明瞭な地表輪郭構造をもつ地すべり地形が認められない。斜面変動は始まっていないか、漸移期のステージにあると判断した。一方、谷ノ内地すべりは滑動期にあり、明瞭な輪郭構造をもつ。移動体と滑落崖との境界には尾根の裂け目起源と思われる大規模な線状凹地があり、滑落崖頂部にはなお多数の開口クラックが分布している.尾根の裂け目群の一部が輪郭構造に進展したことを示している。秩父累帯北帯では、移動体が断層で分断され,すべり面が醸成されている玄武岩は同一層準のものではない。地層は褶曲していることが多く、すべり面は別層準の玄武岩に移りながら連続した不連続面を形成している可能性が高い。四万十帯、秩父累帯、三波川帯の玄武岩を比較すると、岩相・鉱物組み合わせの違いを反映して、狭義の地すべりのすべり面になるものとならないものがある。高知県佐川では,急傾斜する千枚岩質の岩石からなる地層の重力性変形構造を記載した.ここでは、片理に沿うすべりを伴う割れ目の形成と、岩盤の斜面下方への傾動が同時的に進行し、結果的に重力性傾動構造が多地点で形成されている。また、傾動岩盤の構造的下位に、非対称変形構造を伴う角礫質堆積物や斜面表層を被覆する粘性土表層堆積物の挟在が一部で認められる.このことは、傾動岩盤中に比較的連続性の良い不連続面が形成され、それに沿って不動岩盤上を滑動していることを示している。
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